五十嵐一輝に訊いた「なぜゴゼヨでもアプドリでもなくシルエなのか」
2017年9月30日。
新潟の若手バンドシーンを牽引してきたバンド・午前四時、朝焼けにツキ(以下:ゴゼヨ)が解散を迎えた。
大型フェスへの出演、全国リリースに全国ツアーと、傍目には順風満帆に映っている中での解散で多くの方が最期を惜しんだ。
そのフロントマンである五十嵐一輝がこの度“シルエ”というバンドを率いて帰ってきた。
普段多くを語らない彼にその胸中を訊いてみた。
インタビュー、文:ぶるーの
“このままオレの一生終わるなって思った。”
ーいきなり核心を突いて申し訳ないのですが、どうしてゴゼヨは解散という結果に?
単純にザックリ言うと、音楽性の違いというのは大きくて。
元々、僕はUp dripper(以下:アプドリ)というバンドをやっていて、午前四時、朝焼けにツキというバンドのことは知りませんでした。ベースの圭太(シルエ)に教えてもらって1曲知っていたくらい。前ボーカルの亮輔くん(a crowd of rebellion)が辞めるタイミングで誘ってもらった形になります。
アプドリが丁度メンバーも揃って、「これから頑張っていこう!」というタイミングで、「アプドリを辞めて入ってほしい。」ということだったので一度お断りしたんです。
でも最終的には「アプドリを辞めなくていいから、入ってほしい」ということになって、辞めなくてもいいのであれば、自分の活動の幅も広がるし、アプドリにとってもメリットも大きいなと思って加入を決めました。
元々知らなかったのもあって、バンドに入ってから好きになろうと思ってました。曲たちのことやメンバーのこと。
2年半ほど在籍した結果、正直好きなジャンルの1つにはなったんですけど、本当に自分が好きで自分が発信したい音楽にはなれませんでした。
変な話、僕がゴゼヨに感化されてアプドリを辞めてたら解散は無かったかもしれない。
でも、やりたい音楽はアプドリの方でやれてたから、そっちで自分の中にあるモヤモヤを消化していたような感じでした。
ゴゼヨでは他人が作った曲に歌を乗せるという貴重な経験をさせてもらいながら、同時になんだろう、ある意味少し屈辱的な経験というか。
でもそれを乗り越えてバンドを好きになって、このバンドでやっていこうという気持ちになっていくんだろうなって思ってました。
でもやっぱり、好きになったところでやりたい音楽は変わらなかったんですよ。
最終的には人間嫌いの僕がちゃんとメンバーのことを好きになって、メンバーのことを好きになっちゃったから曲のことも好きになりました。
ライブの時も自分たちの曲をかっこいいと思って演奏できるようになったんです。
その上で自分と相談したんですけど、答えは変わらなくて。
辞めるということを伝えました。
やりたいことはあったので、それを殺してたら
「オレ、このまま終わるな」って、オレの一生終わるなって思ったんです。
そんな気持ちのまま皆の前に立ってられなかったので。
その後、何度も話し合いを重ねて僕に気持ちの変化が無かったのでそこで解散が決まりました。
ー一輝が加入当初から付いて回っていた問題が最期まで払拭できずに、最終的には自分の人生と相談して辞めたということですね?
本当その通りですね。
-やりたいことがアプドリでやれてたが故の、ゴゼヨ脱退・解散だったのですが、では何故アプドリも解散という結果に?
僕が「アプドリも辞めたい」って話をしたんです。全くゼロの状態から始めたい、と。
その時の現状では全くバンドを楽しめていなかったので。義務感というか「自分が決めたんだからやらなきゃ」「色んな人を裏切ってこの道を選んだんだから」というのが、ずっと心の中に強くあって。
アプドリはメンバーに話したらすぐに理解してくれました。
たしかに、メンバーは他のバンドも組んではいましたけど、軽い気持ちで承諾してくれたわけではなく、僕が表現したかったことに付いて来たんだから最後まで僕のやりたいようにやらせてくれたというか。
僕が辞めたらそれはもうUp dripperではないから解散しよう。
という形で送り出してくれました。
ー一度リセットしたということですね。そこからシルエ結成までの経緯は?
ベースの圭太と高校生の時に一緒にバンドやってたんですけど、僕は本当に友達がいないので
—そうですね。
うるさい。ずっと二人で呑みに行ったりしてたんです。圭太は少しバンドをやることから離れていて、「高校の頃に戻ったようなバンドやりてえなあ。」って話をしてました。
その時間が個人的には凄く幸せで、そこで色んなものに決心がついたんです。
—このバンドだ、と?
そうです。
「これが僕が小さい頃から夢に見ていた景色を見にいけるタイミングなのかもしれない。」その第一歩だと感じたんですよね。
そこからはメンバー探しですね。とにかく「おもしれえ奴を探そう」と。
で、最初に白羽の矢が立ったのがドラムのもみきです。
ギター見つかるかなあ、なんて思ってたらもみきの後輩に面白い奴がいるってなって、電話で呼び出して飯食って決定したのが侑弥です。
その時の僕の考えとしては「売れよう」とか「バンド本気でやってます!」とかより、何年も一緒にバンドをやれるような関係性を築けるようなメンバーを探そうと思った結果のシルエですね。
最初はとても不安だったんです。アプドリも辞めて自分に何が残るんだろうとか考えたりして。
でも、今客観的に自分を見て今まで組んできたどのバンドよりも僕は楽しそうにやってると思います。
だから、それがお客さんに伝われば良いなって思ってます。
—タイトルにもあるように“五十嵐一輝、なぜシルエ?”の答えとしては“高校生の頃に戻ったような楽しいバンドを、何年も続けられるようなメンバーが見つかったから。”ということになるかな?
そうですね。そこがメインですね。かつ、このメンバーで予想以上の化学反応が起こっているのも気持ちがいいですね。
—わかるなあ。正直、シルエのメンバーを聞いた時にこんなに良い方向にまとまると思ってなかったです。でも、エーテルの撮影の打ち合わせの時もメンバー間凄く空気良いし、楽曲も凄く良い。撮影中も空いてるメンバー同士で自然と曲合わせたりセッションしてみたり。これが自然と出来てるのはすごいなあ、と。
正直、まだ不安はありますけどね(笑)
—でも過去一番やりやすい?
過去一番ですね。あと、曲が出来るペースが本当に早い。スタジオで僕が弾いたテキトーなフレーズに良い感じに合わせてきて、それで1曲できちゃうみたいな。
しかも、メンバーは自分たちの曲が大好きなんですよね。
—本当にずっっと聴いてるよね(笑)
そうなんですよ。自分たちの曲を車で流しながら圭太を迎えに行って、車に乗り込んだ圭太がイヤホン外して「同じの聴いてたわ!」みたいな(笑)
そうやってメンバーが自分たちの曲を好きでいてくれるのに凄く救われるし、曲好きって言われると更に曲を好きになっていく。
助けてるつもりは無いだろうけど、助けられてますね。
しかも、音楽以外のところでも凄く助けてくれるんです。
圭太はデザインを考えられるし、トレイラーを侑弥が作ってくれたり、もみきはバンドの動きを考えてくれる。
—もみきは社交性すごいもんね。
ピカイチですね。エーテルのダンサーさんはもみきの知り合いだったりで、交流が凄く広いからそこでも助けられてますね。
—もし、圭太がバンドやりたいって言わなかったらどうなってましたかね。
これを言うと圭太が重く感じちゃうかもしれないけれど、ダラダラとゴゼヨもアプドリも続けていたかもしれないです。
圭太のお陰で決心がついたので、多分今も続いてますね。
シルエ / 「エーテル」(official music video)
—今回MVを公開したエーテルの話も聞いていきたいのですが。「光と影」というのが歌詞のテーマでありMVもそこがテーマだったわけですが。「影」は昔のやりたいことをやれてなかった自分、「光」は今現在の自分。ということになるんでしょうか?
そうですね。仰っていただいた通り、影が過去で光が未来だとすると。光が無いと影が出来ないし、影があるから光の位置が分かる。それこそ何の為に作った曲かというと、この曲が影になってくれれば良いな、と。曲の最後に「影より君へ送る」と歌ってるんですが、完全に自分に向けてで。
自分らが成長していくにつれて、あの曲もどんどん背中を押してくれるんじゃないかと。
孤独感をMVでは表現しつつも、メンバーがいるから前に進んでいけるんだっていうのを書きたくて。
充実しています。スタジオが一番楽しみです。
—正直、どんな毒を吐くんだろうなんて話を聞く前に思っていたんですけど、バンドを長くやっていると見失いがちな「ただ楽しいからバンドをやっている」という原点に立ち返っただけなんだな、と話を聞いていて思いました。
確かに愚痴っていた時期もあったんですけど、「そんなこと言ってるのカッコ悪いっすよ」ってある後輩に言われて。
過去を気にするのも大事。エーテルでも歌っているし、過去を気にせず前に進めなんてことは言えないです。バンド辞めたいって兎に角思っていた時期もありましたが、今それを言っても誰の心にも響かないですよね。
いずれするかもしれませんが、今は毒吐いたりはしません。
—現状がマイナスでもプラスでもプラスに持っていくしかないですしね。
ほんとにそう。今はとにかくシルエが楽しいんですよ。
本当に充実しています。今はスタジオが一番楽しみだし。
—おお。それは良いですね。スタジオってバンドマンからすると「バイト終わって、あー、これからスタジオだー、、」みたいな。義務感のようなものあるもんね。
正直、思ってました(笑)
でも今は仕事が終わったら「よしっ!今日はどんな曲を作ってやろうかな!」っていう気持ちで臨めているんですよ。
しかも、メンバーがアレンジとか加えてくるんですよ。アホなのに。
それに僕はいちいち驚きながら目を合わせてニヤニヤするんです。本当に高校生に戻ったみたいなことを今やっています(笑)
スキルが身に付いた高校生だと思ってもらえれば見やすいかもしれない(笑)
—高校生にしては上手いなあ、くらいでね。 メンバー同士の絡みとか見てても本当に男子校生の放課後の教室って感じだよね(笑)
そうそう。本当にそう。毎日こんな感じでした。
オトナをはき違えたオトナ達も沢山色んなことを言ってきましたが、結局は損得じゃないところでバンドをやりたかった。
でも、売れる売れない関係無しで組んだバンドですけど、スタジオ入ってメンバーが演奏しているのを見ていると売れる気しかしないんですよ。
どうしてもこのメンバーで認められたいって思ってしまうし、それはメンバー全員が思ってくれているはず。それが凄く心地良いですね。
—最後に少し前の一輝と同じように影の中で頑張っている人たちに一言もらってもいいでしょうか?
辞めたいことがあっても、それを続けている人たちにっていうことですね?
音楽だけじゃなくて恋愛とか学校、仕事などいっぱいそういう問題はあると思うんですけど、たぶん、そのまま続けて大丈夫。決心がつくまでは。決心がついてからじゃないと、その後は何をやっても中途半端になっちゃうと思います。
変にグラグラしないぐらいの決心がついたら、全てを投げ出して大丈夫です。
「やりたいこともやれずに何やっているんだろう。」と思いながらダラダラしていても大丈夫。そういう人は一生ダラダラする。
でももし、決心がつくようなことがあったならその瞬間に辞めるべき。
それまでは大丈夫。
僕ももっと若くしてこうなりたかったなって思うけれど、言っても仕方ないし、ダラダラがあったから今があるわけですし。
だから、揺れに揺れて決心を固めてほしいですね。
そうじゃないと死ぬほど後悔すると思います。もちろん、その先にある幸せというのもあるとは思いますが、決心が固まってからの方が楽しいです。
「苦しいなら辞めな」なんて無責任なことを言われても当時の僕は苦しかっただけなので、そんなことは言わないです。
僕も固まってはいるけど、どうなるかなんて分からず走っている。
でも、結果出したいんですよ。そして、こうやって悩んでる人たちの憧れになりたいんです。救いになりたいんです。
だから、シルエを名乗る時はスーパーヒーローバンドって呼んでいます
誰かを救いたいのもあるけど、誰かの救いになりたいっていうのもあって。
だから、これからもスーパーヒーローバンド・シルエよろしくお願いします!!
<了>
PAN comido@_Pan_comido_
ぶるーの@next_bruuuuno
【政治って意外とHIPHOP】高橋青年局長「Kダブさんとお話してみたい。」
現在、自民党新潟県連青年局の出したポスターが物議を醸している。
これを受けて対談が決まりました。
本記事はその書き起こしです。
メンバーは以下
USU aka SQUEZ:新潟を代表するラッパー
DJ YOSHII:20年以上新潟のHIPHOPシーンを支えてきたDJ
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USU:今回のポスターを知ったのは炎上した後だったのですが、政治って意外とHIPHOPの「意外」という言葉に引っかかる部分があって、「政治ってHIPHOP」と言われれば「おお、言ってきたなあ」となるのですが、その「意外」に込められた意図はどんな感じだったのでしょう?
高橋:今回のポスターは製作会社に依頼して作ってもらったのですが、そこに関しては語感だけだと思いますね。特に深い理由はないかと。その後、SWAMPさん(ポスターのモデル。ラッパー。)が提案してきたのが「政治ってまさにHIPHOP」だったんですよ。なるほどなあとも思いましたが、代理店とも相談して言葉の気持ち良さで「意外」を選びました。
USU:「まさに」がダメだった理由には言葉として強すぎるという要因も?
高橋:いえ、語呂だけですね。もう1つ独断で選んだ理由としては私が音楽が好きだということ。政治の世界では上から下に頭ごなしに意見を落とすことが多いのですが、HIPHOPのようにリスペクトをもって、我々若い層が色んな意見を出し合って新しいものを作っていきたい。青年局は党内野党と言われる蚊帳の外の存在で、我々若い者の意見などは基本的には聞いてももらえない。そういう部分を変えていきたくて「HIPHOP」という言葉を選びました。USUさんが頑張っている世界とは全く違う世界かもしれませんが、世の中に対して影響を与えていくという点においては同じ仕事だと思っていますし、逆にHIPHOPの方々が政治に対してガンガン意見を出してきてほしいし、もっと議論を起こしていきたい。私が音楽を好きなのもあって、若い人たちにもっとHIPHOPを知ってほしいし政治に興味を持ってほしいです。
ここから少し毒舌になってしまいますが、Kダブさんがあのように意味を取ってしまったのは少しショックでした。あの言い方をされてしまうと、許可を得ないと聴いてはいけないのか、許可を得ないとHIPHOPという言葉を使ってはいけないのかという話になってくる。
USU:僕はそこは全然否定的ではないですね。フリースタイルダンジョンが始まった時に中村獅童さんが「HIPHOPって歌舞伎だよね」っていう話をした時は全然炎上しなかったんですよ。じゃあ、歌舞伎は良くて政治はダメなのかという話で、自民党に対しての悪いイメージっていうのが間に入ってるからここまで炎上してしまったのかな、と。安倍さんが普通にテレビですら叩かれているタイミングと、フリースタイルバトルブームのタイミングが噛み合いすぎて「人気取りに使うな」という意見が噴出してしまった印象です。
否定派がなぜそんなに否定しているのかは分からないけれど、直接真実を聞きにいくのがHIPHOPだと僕は思っているので、今回もメッセージをすぐ送らせていただいて僕が話を聞く。そうすることで少しでも新潟のHIPHOPファンに納得してもらうのが良いと思いました。で、実際最後に選ぶのは有権者ですし、票を入れなければ良いだけの話。なんでここまで叩くのか正直分からないというのが僕の本音ですね。僕もこれで叩かれるかもしれませんが。
高橋:叩かれることに関してはある程度覚悟はしていました。覚悟はしていましたが本物のプレイヤーが出てくるというのは想定していませんでしたし、戦略でHIPHOPの人気に乗っかろうなんてことも考えていませんでした。純粋にこれまでHIPHOPが成り立ってきた形と、これから私たち若者が作上げていく政治・生活の形をイコールにしたかった。というのが今回のキャッチコピー。
でもそれは本気でHIPHOPをやっている方たちにとって失礼だったかもしれません。日本のHIPHOPを作ってきたという自負がある方々に良い印象を与えなかった、ということに関しては反省するところは我々にもあるかなと思います。
ネタとして自民党がこういった世論になっているからマスコミは書きやすいですよね。でもSWAMPさんの名前が表に出てたら少しショックだったと思います。申し訳ないという気持ちで。我々が起こしたことに対して本人が叩かれるのがこちらとしては辛いです。
USU:SWAMPはもっと叩かれて売名になればよかったのに(笑)
僕はあいつがHIPHOPであるということは知っているので、自分で選んでモデルになってる訳だし、バンドとラップしようが、Negiccoちゃんとラップしようが「まあ、SWAMPはHIPHOPだからな」というところに僕は落ち着きますけどね。あいつが政治は意外とHIPHOPだと思っただけの話。
高橋:本人はそんなつもりなかったとしてもですけどね。朝日新聞さんや東京新聞さんはかなり酷い書き方をしていましたね。
USU:それも炎上したという事実だけで記事にしたじゃないですか。実際直接聞きに来た人っていなかったわけですよね。メディアってこんな感じなんだなって思うところはあります。
向井:私は結構取材を受けまして、かなり丁寧に説明を申し上げたつもりだったのですが、結果的にああいった書き方をされてしまいましたね。
高橋:もう1つ。自民党は保守政党で、例えば共産党、社民党とかSEALDsのような若い人たちがHIPHOPやラップを使って訴えたりしていた時期があったかと思いますが、あれはあれで相手陣営としては「面白いな」と。これで世の中や社会の問題を一生懸命訴えていくというのは一つのやり方としてかっこいいなと。SEALDsに関して言うと。主張していること1つ1つ聞いていくと勉強不足もあって矛盾がありました。でもあれを踏み台にして表社会に出ようとしていたと思うので、やるなら政界に進出するくらいとことんやってほしかったですね。
USU:HIPHOPとか音楽を使って政治を変えるってことですよね。
高橋:逆に言うと保守政党である自民党がHIPHOPや音楽を利用してというと言い方が悪いですが、それを使って主張していくというのはそんなに悪いこととは思いません。
YOSHII:USUとも話したのですが、(前知事)泉田さんが立候補した時に、万代で応援イベントをやりました。泉田さんにNEW ERAのキャップを被せてDJやダンスも交えて。まだ売れる前のHilcrhymeのTOCとかも一緒にやってましたね。
USU:でも確かその時も批判は来ましたよ。「政治というHIPHOPと真逆の事をなんでやってるんですか?」っていう意見は当時もいただきました。HIPHOPってもうそういう感じになっちゃってるというか。例えば、焼き鳥の食い方一つ取っても「お前HIPHOPだな!」みたいな(笑)
でも多分、音楽の中でも強いんですよね愛情が。だから変な話、ロックって凄いスーパースター生まれてるじゃないですか。ハイスタとかワンオクとかとかもそうなんですけど。
YOSHII:矢沢さんとかね。
USU:HIPHOPってそこまで到達できてない。それってどこか自分たちが閉鎖的になっている部分もあるし、”don’t believe the hype”っていう言葉があって広告に頼ったりするとDisられる対象になったりするんですよ。すごく堅いんですよね、HIPHOPは。
高橋:なぜなんです?
YOSHII:元がやっぱり這い上がっていくような志向が強い文化じゃないですかHIPHOPって。音楽っていうより。弾圧や人種差別を受けているという所から始まっているので。90年代初期のリリックの内容も「銃はやめろ」「殺すな」「女レイプするな」とかそういうのが全体の半分以上はいってて、その中に少数ですがパーティー系があったりとか。今の日本だとバトルがブームになっていたりパーティー系がいて、あまり政治的だったり反社会的なリリックって正直ウケないし、そういうものをダウンロードする人もいないですし。
USU:なんでこんなに炎上しちゃったんだろうなあ。
YOSHII:タイミングだと思う。
写真左:USU aka SQUEZ / 写真右:DJ YOSHII
高橋:保守的であるという点では似ている部分もありますね。例えば、自民党がHIPHOPを使うと言われることもあるし、USUさんのように政治を使うと言われるという動きはリンクするものがある。僕らとしては正しいことをやっているつもりでも自民党として叩かれてしまう。だから「党内野党」と言われるんですよね。若手の意見はほとんど受け入れられずに上の人たち、長い人たちの意見がほとんど通ってしまう。
向井:有権者もそうですよね。おじいちゃん・おばあちゃんが投票に行って、若い人が行かないので、どんどんおじいちゃん・おばあちゃん寄りの政策になってしまう。
でも、そうじゃない、と。僕らがやりたいのは若い人にどんどん政治参加していただきたい。その背中を押すための今回のポスターではあります。
YOSHII:党内野党という立ち位置であることが世の中に出ていれば受け取られ方は全然違っていたと思います。
高橋:自民党のイメージがもう、そう、なので。おじいちゃんで古い人たちっていうイメージが強いじゃないですか。
ただ、自民党の公認をもらっている僕が言うのもなんなのですが、別に自民党じゃなくてもどこでもいいんですよ。自分のやりたいことが実現できれば。ですが、自民党というのは最大会派で一番強いですし、自分の信条にも合っているのと自分の思っていることを実現できるのがここしか無いんですよ。だから、辛いことがあったり色々と言われることがあっても、ここにいて頑張ってこの世界で出世してやるという気持ちですね。
USU:それだけ聞くともうHIPHOPですよ。
YOSHII:完全に。党も関係ないという話ですし。
USU:いやあ、、、HIPHOPだなあ、、、。
向井:キャッチコピーも「自民党はHIPHOP」とかではなく、色んな意見があっていいと思うので「政治」という言葉を使っています。
USU:ぶるーのはどう思った?
ぶるーの:僕が元々今回のポスターを知ったきっかけが、HAIIRO DE ROSSIさんという僕の好きなラッパーのTwitter経由で、彼は曲中でも言ってますが反安倍政権側の人間なのもあって、今回の件は元々あまり良い印象ではありませんでした。
表現の自由とは使いようだな。まずそのヒップホップと一番遠いところに位置している自覚を持つところから始めて頂きたい。 pic.twitter.com/ExqtAhCkZq
— HAIIRO DE ROSSI (@RossiNDee) 2017年7月15日
ですが、そういうのは全て一度置いた上で、聞いてみたいことをいくつか持ってきていたのですが、「もしコピーで使われていた言葉が『HIPHOP』でなかったらどうなっていたのか。」ですね。ライブハウスにいたので「ROCK」だったらどうなるんだろうとか「RAGGAE」だったらとか、音楽じゃなくて「コンテンポラリーダンス」だったらどうなんだろうって。
YOSHII:RAGGAEとPUNKは考えたね。
ぶるーの:HIPHOPじゃなかったときに、そのシーンの方々から何を言われるのかなっていう。
USU:何も言わないでしょ。
高橋:仮に例えば、「若い世代で新しい生活や政治を作っていこうぜ」って表現するとしたら音楽のジャンルだと何だと思います?僕はそこでしっくりくるのがHIPHOPなんですよ。
USU:なるほど。たしかに。
高橋:ROCKじゃなくてHIPHOPなんだよなあ、っていうのが一番強い。
ぶるーの:僕が思うにですが、今の日本人が言う「ROCK」は本来の本質とは違うところにありますし、ROCKをやっているバンドマン達も多くは本質的なROCKを追及して活動しているわけではないです。でもHIPHOPは本質的な部分を大事に大事にしながら大きくなってきたし、そのスタンスは崩さずにこれからも大きくなっていきたいが為、今回のような軋轢・摩擦が起こったんじゃないかなと。
USU:HIPHOPってレペゼンする気持ちが強くて。地元をレップするっていう気持ちが。でもそれって高橋さんが地元に残ってやっているのとマインドの部分では変わらないですよね。別にその、自民党としてのやり方とかは無視して、「人間としての」考え方的には変わらないなと。
YOSHII:それを前面に出すとだいぶ色々と変わると思います。
USU:僕は今回絶対最終的にはこういう話し合いになるだろうと思ってました。でもこれを文字に起こすと反発する奴がいっぱい出てくると思うんですよ。僕自体をどう思われようが別に良いんですけど。話を直接聞いて、HIPHOPを感じたというのが真実なので。
高橋:言い方が悪いですけど、今までの政治学校のチラシとか作ってもすごくつまらないチラシだったんですよ。こんなものをもらってどんな若者が政治の勉強をしようと思う、と。誰が夢を抱けるのとなった時に、近畿大学のようなインパクトのあるものにしようということで、コンセプトと共に発注したら代理店から今回のポスターが送られてきました。何パターンかありましたが「これしかない」と思いましたね。
近畿大学の広告
向井:今回をきっかけにUSUさんも興味を持っていただきましたしね。
USU:そうなんですよ。メッセージを送らせていただく前に入学したんですよ。
高橋:え、そうなんですか!?
USU:なんでもとにかく自分で知りたいし、変なこと言うのも嫌な性格なので。
高橋:面白いですよー!ちなみに、一回目の講師は私なので。笑いから入ります。それがHIPHOPに繋がるかは分かりませんが、最終的には新潟が抱える課題・問題の話をする予定です。で、自論しか述べません。反対する方は反対すればいい。それで議論して新しいものを作り上げていくのが自民党青年局だと思っているので。色んな意見があって良い。だから、今回こうやって話をしているだけでも凄く嬉しいんですよ。ジャンルが違う方達と話をするのは凄く刺激になります。さっきの焼き鳥の食べ方がHIPHOPっていうやつも「それ使えるなあ」と(笑)
写真左:高橋青年局長 / 写真右:向井さん
USU:HIPHOPってライフスタイルだと僕は思っていて、音楽のジャンルでもあるんですが生き方。HIPHOPとラップっていうのは全然別物なんですよ。ラップは音楽で言葉遊びだったりするんですけど、結局今こうやってバトルが流行って、フリースタイルダンジョンが世に出て。新しいファンが増えた結果HIPHOPを音楽だと思っている人が多い、昔からの文化やルーツを知らないのに。
YOSHII:仕方ないと思うんだけどね。
向井:私もラップも好きなのですが、今、小学生がHIPHOPのダンスをするし、友達の娘がHIPHOPのダンススクールに通っているなんていうのも普通の話になりました。
YOSHII:最初はダンスすげーってなったんですけど、必修科目になったらそれが裏目に出てしまってダンスは今スポーツになってしまいました。HIPHOPがある意味で国に認定されたわけじゃないですか。授業の選択肢の一つになったのも凄く嬉しかったのですが、ただの選択肢の一つになってしまいましたね。
USU:根元はフォーカスされずそこだけ切り取られてしまいましたね。
ぶるーの:カルチャーとして取り入れられたのではなく、スポーツとして取り入れられてしまったわけですよね。
USU:アキラ100%を不謹慎だって叩く人がいますけど、小さい女の子のダンスに使われている曲のリリックとかだいぶえげつないですからね。Bitchとか女抱くとか。本人も親も意味を分からずにいる。
向井:僕の2歳の息子はRUN DMCのTシャツ着てます(笑)
私たちが叩かれたのって「HIPHOPの歴史を知ってんのかよ」っていう部分もあったと思います。「お前らHIPHOP知らないでしょ」っていう。
YOSHII:今回のはそうだと思いますね。でも、自民党がバコーンと間違いない政党だとみんなが思っていれば、また話は違ったと思うんですよね。「自民党だから叩いているわけではない」という意見は建前かと。
高橋:反社会勢力というか不良のイメージもどうしてもあるので、自民党が調子良かったとしても、HIPHOP側からある程度は言われていたんじゃないかと思いますね。政治を批判するのって正直かっこいいじゃないですか。だから、Kダブさんに直接お会いしてお話したいっていうのはありますね。あれだけ言われるとこちらも説明したいなとはずっと思っていたのですが、Twitterでやり返すとただの喧嘩になってしまうじゃないですか、なのでグッと堪えて見ていました。実際、一生懸命やってきた方なので、それを否定する形になってしまったのかもしれませんが。
USU:高橋さん的には叩かれた時には「うわー。最悪だー。」ってなりました?「気にすんな。行こうよ行こうよ。」って感じでした?
高橋:後者ですね。全然へこたれませんでした。炎上商法というものもありますが、全くそんなものは考えてなくて、正しいと思ってやっているので。
USU:それを言われたらもう。HIPHOPですよ。
高橋:それで叩かれて色々言われたら、反省する部分は勿論反省します。真剣にやってきた人たちがいるのであれば。ただ、こちらは真剣にはやってないけど好きな人たちじゃないですか。好きな人たちの意見を否定してるのかという話にもなるので、僕は考えは曲げるつもりはありません。
USU:そういう芯の強さのようなものがあるんですね。聞けて色々と安心しました。ポスターはいくつか案があった中から選んだというお話だったので、消去法で消極的に選ばれたものなのかな、とも思っていたのですが。完全に能動ですね。
向井:ポスターを選んだ要因としてSWAMPさんが大きかったですね。新潟で頑張っている方だったので。あの方も我々と同じで新潟を盛り上げたいわけじゃないですか。
USU:自分たちでも「これだ」と思って動いているなら、それはもうHIPHOP。いや、HIPHOPっていうか男ですよね。なので政党とか関係なく肯定も否定もできない部分はあると思うんですけど。
高橋:なので、Kダブさんとお話してみたいですね。こちらの考えは一切表には出してきませんでしたが、伝えたいものは伝えたいなと。
USU:これを文字に起こしたら反応あると思いますよ。しかも、今回炎上を請け負うのはぶるーのですし(笑)
ぶるーの:・・・。
でも、僕が今言いたいし感じたのは「政治って意外とHIPHOP」だなっていう。「政治」っていうよりは「青年局」ですね。
高橋:先日、糸魚川や三条にいって若手の政財人とお話してきたんですよ。すごく面白かったですね。糸魚川に関していうと、去年大火があって。そこに生まれて育ってこれからも住んでいくという若者たちが、どういう社会や町づくりをしたいのかとか。三条だと金物であったり食文化。ラーメンなど頑張っている方が沢山いる。で、話してみるとHIPHOPなんですよ。「かっけーなー!」と思わされる。
USU:ラーメン屋は絶対HIPHOPですよ。間違いない。作品=CD=ラーメン。
高橋:今日は本当に良い機会です。
向井:そうですね。新潟の方には絶対説明したかった。
高橋:この件は本当は新潟で盛り上がってほしかったんですよ。
先週、東京行った時も「新潟県連・青年支部局大変じゃん」なんて言われたのですが、新潟自体は全然大変じゃないですよと。恐らく、東京でHIPHOPをやっている方たちが話題にしているので、東京のマスコミが取り上げるという構図。新潟にはマスコミ自体それほどありませんが、特に取り上げられたりしませんでしたので。
USU:僕は直接話を訊くまでは押さえてましたよ。言わない方が良いなと思って。
高橋:なので、問合わせいただけた時はとても嬉しかったです。
USU:これは本当に新たな一歩だと思うんですよ。今日で改めて「政治勉強しよう」って思いましたし。初めて政治ってこうやって動いているんだという部分に触れました。
高橋:でも実は、日本の若者が政治離れや政治に興味が無いというのは良いことなんですよ。日本の政治が安定しているということなので幸せなこと。韓国や中国なんかはみんな大変じゃないですか。で、それをやっているのが手前味噌ですが自民党。でも、世論って面白いもので、政党の支持率が上がると反社会的な動きが増えてくるんですよ。なので、二大政党はあって然るべきですし当然のこと。
ポスターを作る前から向井がよく言うんですけど「政治ってDisり合いだからHIPHOPですよね。」って。
向井:しかも、血を流さない。元々が僕の認識だとアメリカの黒人のギャング達が紛争しない為の手段として、スキルを磨いてルールを決めてバトルになった。私たちにもルールがあって、その中で議論をして新しいものを生み出していく。そこにHIPHOPとの共通する部分を見出してました。
USU:元々はダンスバトル始まりでしたからね。
高橋:良いこと言うなあと思って聞いてたよ。
向井:こういう話をしたら代理店の方にも同意していただけて。
USU:YOSHIIさんがよく言うのが「UNITYだけではダメだ」と。僕は割とUNITYな方なんですけど、言われてみればBATTLE & UNITYが大切だなと。戦う気持ちとどこかで手を結ぶという気持ち。
高橋:その通りですね。
USU:じゃあ、飲みましょうか!
――――――――――
以上が本件の真相でした。
対談中も結構皆さん飲んでたので、器用に話すというよりは本当に腹を割って話しているなという印象でした。
こういう話し合いを酒の席でするのってどうなの?なんて意見もあるとは思いますが、音楽を本当に愛する人たちの正しい話し合いのやり方だと僕は思います。
本当に理解しあえたので”仲間”として仲良く2軒目にいきました。
聞くと高橋議員はよくFUNKY JAMというDISCOイベントで踊っていたんだとか。
奥さんは美人で昔からHIPHOP好きらしいです。
ポスターのキャッチコピーや問題の画像を添付したツイートにかなり引っかかった方が多かったと思いますし、僕も胸にもやっとするものはありました。
HIPHOPという言葉を今のシーンの盛り上がりに乗っかる形で人気取りに自民党が使ったとして、使われたHIPHOP側は政治からどんな恩恵が受けられるのか見えずらいというのもありますし。
でも、HIPHOPという文化自体もまだ歴史の比較的浅い新しいもの。みんなで議論しながら作っていけたら良いのではないかと思います。
住所の問題で票を入れることは難しいですが、高橋議員の活動は今後も是非応援したいなと思いました。
最後になりますが、K DUB SHINEさんとの直接の対話が実現することを願っております。
文・写真:ぶるーの